2012年1月4日水曜日

ファンズワース邸 Farnsworth House


ファンズワース邸のダイジェスト版ビデオとしては、これがいいのではないでしょうか。
「BBC Documentary - Visions Of Space - 2003」だそうで、カットもなかなかいいと思うのですが。



ビデオでは、当時の住まい手、ロード・ピーター・パルンボ(Load Peter Palumbo)氏が、インタビューに答えている。
パルンボ氏は、ロンドンの不動産開発業者であり、美術品コレクターであり、建築の目利きとされる。
ウィキペディアでは、フランク・ロイド・ライトの住宅やも所有していたり、テートギャラリーの理事を歴任し理事長も勤めているから、確かに相当芸術に造詣の深い人物なのであろう。
評伝ミース・ファン・デル・ローエで著者フランツ・シュルツはパルンボ氏を次のように評している。
「パルンボこそこの家の理想的なオーナーである。この住宅に必要な手入れを無限に、しかもェ家院に行えるほど裕福であり、どの年にもごく短い期間しか暮らさないのである。つまり、ここに「住む」ことを選んだら我慢しなければならないことも、彼にはたやすいことなのだ。この空間が作り出す不自由さに耐え、この還元的美の場から精神的生活を十分に引き出して堪能しているのである。」
このように評された、パルンボ氏のこの家の使い方、暮らしぶりの雰囲気を、映像とインタビューを通して見事に伝えているように思う。
そして、個人の独占された、空間として、ミース・ファン・デル・ローエの空間は、さらに神聖化されたといえるのではないか。

現在は、ナショナルトラストにより購入され、博物館として一般公開されている。
パルンボ氏は、2003年サザビーズに競売に出し、ナショナルトラストが、750万ドルで落札したのであった。
と、実は、これを調べながらわかった。博物館として、一般公開されているのだ。・・(勉強不足で。)
一般公開されていると思って、最近の写真を見ると、神聖化されてた天上の空間、住宅モデルの理想という雰囲気より、どこか平明で、深みが薄れた様に感じるのは、私だけであろうか。

これらの経緯や、この住宅の更なる歴史、経緯については、Mies van der Rohe's Farnsworth Houseに詳しい。




ファンズワース女史との抗争の話。恋心さえ抱いていた女史が、建設の途中で、建設費は高騰、さらに、ミース彼自身の理念的理想の空間を求めたため熱環境・換気など、の理由で、訴訟まで広がったのは、いまや有名な話であるが、これもリポートされている。
図面(GAディティールによるもの)、工事中の写真、なども興味深い。
また、ファンズワース女史が利用していた時期のインテリア写真も紹介されている。現在の展示家具は、パルンボ氏の使い方に近いものであり、パルンボ氏の家具配置によりこの家は完成させれれたともいえまいか。ファンズワース女史の家具の選択・配置などを見ていると、パルンボ氏がいかにミースの理念・意図を感じ取り、インテリアを構成しているのがわかる。結局は、住まい手のにより、その空間の様子がいかにに変るかも、考えさせえれれるところだ。
とはいえ、パルンボ氏の態度は、忠実に設計を復元するだけではない、「BBC Documentary - Visions Of Space 4/7- 2003」の冒頭の画像アングルを見ると、東側に階段が増設されている。インタビューなどから推察するに、テラスでくつろぎ、北側の広い芝地で、犬と遊ぶのに便利なための増設なのだろう。調和しつつ、一方バルンボ氏でさえ修正は必要という、こんなところも、設計と住まい手の関係のあり方を、考えさせられるところだ。
さらに、洪水を理由に、この家は高床式となっているのは、機能的デザインという視点からも、よく言われることだ。他のビデオでも床の下まで浸水したビデオも検索できる。

しかし、まさにミース・ファン・デル・ローエも想定外!のことがあったようで、床上まで浸水した様子も紹介されている。
家具、インテリアの上等の板材もめちゃくちゃである。「プリマベーラ(オークから作られる木材の一種)製のコアは、ドイツから移民してきた職人、カール・フロイントが特別に組み上げた」(評伝ミース・ファン・デル・ローエp254)とあるが、その板もはずされ、水没の水の跡が痛々しい。
ウィキペディアでは、1956年、1996年、2007年の3回このような床上浸水があったとされる。またここでは、このためスクランブルキュレータが設置されてとされるが、どのようなものか把握できなかった。
最後には、サザビーズに競売時に作成されたアニメーションもあり、充実した内容になっている。

やっぱり、いいね。「BBC Documentary - Visions Of Space - 2003」のインタビュアーのように、一度止まってみたいものだ。
できれば、こんな週末住宅にやっぱりすんでみたい。博物館じゃなくてね。家に。

公式ホームページLandmarks Illinois
公式ホームページ Farnsworth House

ミースの家具
バルセロナチェアの紹介